歴史研究者と一般市民の過去の認識方法の違いを主題とした“Subjecting History”

Trevor R. GetzとThomas G. Padillaの二人が編集する“Subjecting History”がオープンレビュー形式で公開されており、執筆分担者が募集されている(11月15日まで)。

この本は、「アカデミックな歴史学は過去を十分に表わしているのか?」「ノンアカデミックな人の過去の理解の仕方とアカデミックな歴史学の過去の認識の在り方は対立するのか、あるいはしないのか?」「対立する解釈を無視せずにアカデミックな歴史学が過去をよりよく表現するための方法とはどのようなものか?」という問い、いわば、歴史学的な歴史認識と一般市民の歴史認識の違いをテーマとしたもの。また、“Subjecting”という言葉には、歴史というものが文章の中で議論されている極めて重要なトピックであるということを示す意図と、編者として歴史をもうすこし市民の中に“投げ出したい”という意図、の2つの意味が込められている。

オープンレビューを選択したのは、テーマに従って、研究者に限らず広くコメントを受け付けるためだろう。完成した暁には、オハイオ大出版局から刊行が予定されているが、その際コメントも可能であれば含めたうえで刊行されるようだ。

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一般的に、歴史研究者のコミュニティは一般市民の「誤った歴史観を正す」という姿勢が濃厚だと思うが、あえてそこにとどまってその姿勢に対し問いを立てるというものと言えるだろう。

神聖ローマの重要文庫“Bibliotheca Palatina”がデジタル化で「復活」へ

1386年ハイデルベルク大学設立にまでさかのぼり、30年戦争期後にヴァチカンとハイデルベルクに分かれてしまった、神聖ローマの最も重要な蔵書コレクションであるパラティーナ文庫“Bibliotheca Palatina”が、デジタル化技術で再現されるようだ。

2001年にハイデルベルク大学図書館が当該コレクションのデジタル化を開始し、2012年1月にはヴァチカン図書館も同様にデジタル化に着手したとのことで、これが終われば二つのデジタル化コレクションが再度一つにまとめられ、晴れて「復活」になるとのこと。

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Bibliotheca Palatinaを「パラティーナ文庫」と書くのかはちょっと自信ないが。

国際会議を元にした人文学史シリーズ“The Making of the Humanities”がオープンアクセスで公開 11月には第3回目の会議が開催

2010年に第1巻“EARLY MODERN EUROPE”、2012年に第2巻“ From Early Modern to Modern Disciplines”が刊行された(少々スケールの大きい)人文学史シリーズ“The Making of the Humanities”(Bod, Rens, Maat, Jaap & Weststeijn, Thijs, Amsterdam Univ. Press)が、OAPEN Libraryで無料公開されている。PDFダウンロード化。

どうやらこのシリーズは、2008年、2010年に開催された書名と同じタイトルの国際カンファレンスが元になっているようだ。今年の11月1日からはローマで第3回目のカンファレンスが開催されることになっていて、プログラムにはThe Humanities and the Sciences、The Humanities in Society等とともに、Writing History、Information Science and Digital Humanities等のセッションも入っている。

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ありそうな気もしたが、類例が思いつかない。興味深い、野心的な取り組み。

歴史学の学術コミュニケーション新プラットフォーム“American History Now”公開

2012年10月17日、紙の学術雑誌の持つ欠陥と限界を超えることを目指して作られた、歴史学(アメリカ史)の学術コミュニケーションの新プラットフォーム“American History Now”が公開された。Digital Humanities NowやGlobal Perspective on Digital History等と同じくPressForwardを利用して作成されている。

American History Nowの一つの機能として、レビューの投稿とコメント付与を通じての、議論の場の提供があげられる。American History Nowは、ウェブ上にあるアメリカ史に関するレビューを集め、また誰でもユーザは読んだ本のレビューを投稿できるようになっている。また、他のユーザはそのレビューに対してコメントをつけることで、議論ができるように作られている。そしてもう一つの機能は“Research Notebooks”、いわゆるブログである。ユーザがアイディアや研究のネタ等を投稿して、それに対して議論を行ったり、ヒントを得ようというもの。

学術コミュニケーションを考え直す場を作りたかったと述べているように、要するに、American History Nowは、従来では広まらなかった、論文未満の、しかし忘却するには惜しい、歴史学の情報を掬い上げ、それをウェブに乗せてオープンにしていくもの、と言えるだろう。

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今の仕事を歴史学の分野に移すとしたらどのようなやり方ができるだろうか、という考え続けてきた問いの一つの答えだと思う。さてどうなっていくか。注目せざるを得ない。

歴史系ブログによる学術書刊行プロジェクト“historyblogsphere”がオープンピアレビューを開始 12月10日まで

歴史系ブログによる学術書刊行プロジェクト“historyblogsphere”が、オープンピアレビューを開始した。出版社(?)のサイトで全部で18件の論文が公開されていて、ピアレビューへの参加が求められている。ピアレビュー期間は12月10日まで。

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こういうの1回やってみる、というのもありかもしれんな。

せんだい歴史学Cafe: USTREAM番組 せんだい歴史学カフェ第13回「回顧と展望」

sendaihiscafe:

せんだい歴史学カフェも、今回でとうとう2年目に突入します!

そこで今回は、これまで12回の放送を振り返り、今後の放送の指針を模索する回とします。

題して、「回顧と展望」!

まず、これまで12回の記憶を掘り起こし、歴史学カフェが辿った歩みを「回顧」します。

そして、次回以降の番組の進む方向性、つまり「展望」を、皆さんと話し合っていきたいと思います。

1周年を記念するお祭りとして、古代ローマの料理を作ってお祝いもします!

次回放送のテーマのコンペもやります!

ソーシャルストリームでの投票、よろしくお願いします!

せんだい歴史学Cafe: USTREAM番組 せんだい歴史学カフェ第13回「回顧と展望」

パリ2000年の歴史を歴史的建造物の3Dで学ぶ“Paris 3D Saga”

これまでギザのピラミッドの3D化を手掛けてきたDassault Systemesが、今度はパリの3Dプロジェクト“Paris 3D Saga”を公開した。

パリの2000年以上の歴史を、その時々の歴史的建造物を通じて見せるというもので、古代ローマのフォルムから始まり、ノートルダムやルーブル、エッフェル塔なんかも登場する。

ウェブサイトでも3Dは見ることはできるが主に動画で進行するのであまり自由度がない。無料で提供されているiPadアプリは実際に現地に立ったかのように映し出してくれるので、こっちの方がなかなか興味深かった。

History SPOT、歴史研究者向けにセマンティックマークアップとテキストマイニングに関する自己研修教材の提供開始

イギリスのIHRが運営している歴史研究者向けのイベントや研修等を実施するHistory SPOTが、Digital History関連の自己研修のための教材モジュールの提供を開始した。これらは登録すれば見ることができる。

提供開始となったモジュールは、XML形式でのセマンティックマークアップ法とテキストマイニングの2つで、各モジュールは研修用教材とケーススタディ、そしてツールの説明の3つの要素からなる。これらはHISTOREの成果とのこと。

また、これら2つのほかに、ビジュアル化、Linked Data、クラウドコンピューティング等の項目がある(が、まだ中身は作られていないようだ)。

acls1919:

Memories of Conquest: Becoming Mexicano in Colonial Guatemala By Laura E. Matthew F’12 now available from the University of North Carolina Press.

Indigenous allies helped the Spanish gain a foothold in the Americas. What did these Indian conquistadors expect from the partnership, and what were the implications of their involvement in Spain’s New World empire? Laura Matthew’s study of Ciudad Vieja, Guatemala—the study first to focus on a single allied colony over the entire colonial period—places the Nahua, Zapotec, and Mixtec conquistadors of Guatemala and their descendants within a deeply Mesoamerican historical context. Drawing on archives, ethnography, and colonial Mesoamerican maps, Matthew argues that the conquest cannot be fully understood without considering how these Indian conquistadors first invaded and then, of their own accord and largely by their own rules, settled in Central America.

Shaped by pre-Columbian patterns of empire, alliance, warfare, and migration, the members of this diverse indigenous community became unified as the Mexicanos—descendants of Indian conquistadors in their adopted homeland. Their identity and higher status in Guatemalan society derived from their continued pride in their heritage, says Matthew, but also depended on Spanish colonialism’s willingness to honor them. Throughout Memories of Conquest, Matthew charts the power of colonialism to reshape and restrict Mesoamerican society—even for those most favored by colonial policy and despite powerful continuities in Mesoamerican culture.