『人文情報学月報』第20号が刊行

2013年3月31日に『人文情報学月報』第20号が刊行された。

今年の1月からスタートした、私の連載記事「Digital Humanities/Digital Historyの動向~2013年2月中旬から3月中旬まで~」も今回で3回目。この中ではやはり、Dan CohenさんのDPLAの件が重要だと思う。また、ちょっとDHから外れるかもしれないが、“Subjecting History”は個人的にはちゃんと読んでおきたいと思った。

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Digital Humanitiesにご関心をお持ちの方は是非ご購読を。

頑張って書いていますので。

ちなみに2月分は以下の通り。

歴史研究者向けアプリ

2013年3月18日付のアメリカ歴史学協会(AHA)のブログで、歴史研究者向けのアプリ紹介記事が掲載されている。2010年8月9日と2011年2月14日の記事に引き続き、今回で3回目のシリーズものだ。

今回の記事では、「歴史もの」「仕事用」「旅行時」「楽しみとして」の4つに分けて、それぞれ4~8つ程度のアプリが取り上げられている。iOS用が多いが、アンドロイド用のものもそこそこあり、無料有料が混在。

以下、気になったものを2つピックアップしてみる。

・ Environmental History Mobile

iOS用の無料アプリ。環境史に関するアナウンスやブログ記事、ポッドキャストなどを含め、環境史の研究者コミュニティの最新情報を知らせてくれるアプリ。

・ HandyScan

iOSとアンドロイド用無料アプリ。いわゆるスキャナ。ケータイで撮って、メール送信またはクラウドで保存。有料バージョンではPDFにもできるらしい。

 

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全体的にあまり歴史研究者向けという感じはしないが、こういう記事は面白い。

さて、日本ではどのようなものがあるだろうか。

DHにポストコロニアリズムを―Postcolonial Digital Humanities

Adeline KohとRoopika Risam両氏によるプロジェクト“Postcolonial Digital Humanities”のウェブサイトが、3月15日に公開されている。

これは、デジタル空間において白人優位の人種間格差があることを背景に、コロニアリズムや帝国主義、グローバリゼーション批判と、人種や階級、ジェンダー、セクシュアリティ等に関係した批判理論を、Digital Humanitiesにもたらすのが狙いとされている。(もちろん、Postcolonial Digital Humanitiesとは何か、といったそもそもの問題も提起している。)

このプロジェクトの前身には、90年代にエモリー大の研究者らが公開していた、ポスコロ研究に関する文献や情報を提供するウェブサイトがあるが、Postcolonial Digital HumanitiesはこれをWeb2.0、ソーシャルメディアを活用して行っていくのだとしている。

これまで続けられてきた人文系の諸理論がDHではあまり考慮されていないと思っていたので、こういう取り組みが出てくるのはありうることだと思う。

“モバイル×歴史教育” HASTACのDigital Historyブログシリーズ第2弾公開

HATACのDigital Historyグループによるシリーズ記事が3月3日に公開された。毎回、3つのDigital Historyプロジェクトを取り上げ、その研究者を招いてグループインタビューするというもので、今回はその第2弾にあたる。

今回のテーマは、歴史教育におけるモバイル技術(“Mobile histories: How mobile technologies transform history teaching”)で、記事はナショナル、州、地方(都市)の歴史と、大きく3つに分けられている。それで、ナショナルヒストリーにはアメリカの議会図書館によるプロジェクト”Teaching with Primary Sources”が、州の歴史についてはミネソタ歴史協会が、最後に地方(都市)の歴史に関してはClark Street Comminity Schoolの教員によるモバイル端末を利用した経験が紹介されている。

取り上げられている全てのプロジェクトでは、ARISというモバイル向けオープンソースプラットフォームが利用されているとのことで、これも興味深いと思う。

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「モバイルと歴史教育」と聞くと、なんとなく「地域の歴史を…」という視点のものだと思っていたが、LCのプロジェクトを引っ張ってくるとは思わなんだ。ただ、LCのインタビューはいまいちなのが残念。