「アメリカとカナダ、イギリスの歴史研究の約75%がヨーロッパと北米を対象にしている」

という結果がでているそうな。アメリカ歴史学協会の月刊誌Perspectives on Historyの2013年5月号に掲載されている、Luke ClosseyとNicholas Guyattらの”It’s a Small World After All The Wider World in Historians’ Peripheral Vision”という記事のお話。これは、アメリカ、カナダ、イギリスの歴史研究者2400人の研究対象地域を調査した結果に基づく。

調査の結果、タイトルに書いた通り、米英加のその3か国の全歴史研究のうち、3/4以上(約75%)がヨーロッパとカナダとアメリカを対象にしていることが分かったという。細かく言うと、51.9%がヨーロッパ、北米が25.4%で、極東史は9.4%しかない。さらに記事では、各地域を占める世界人口の割合と研究の比率を比較してもいる。

3か国それぞれでの研究対象地域をみると、全体的に、アメリカの研究者はその3か国のうちで”比較的”様々な国・地域の研究をしているが、イギリスの研究者は自国の研究をしている割合が高いという。具体的には以下の通り。

・アメリカの研究者の歴史研究の約68%が北米とヨーロッパを対象にしたもの(アメリカの研究者のうち、アメリカ史を研究している人は33.3%)。ただし、アメリカの研究者はイギリスやカナダに比べて中東やラテンアメリカの研究の割合は高い。

・イギリスの研究者の41.2%がイギリスの研究をしている。次に多いのがヨーロッパを対象にしたもので36.12%、アメリカ史は6.14%。つまり、イギリスの研究の84%がヨーロッパとイギリスと北米を対象にしたものという。

・カナダの研究者の26.83%がカナダの研究をしている(アメリカの研究者やイギリスの研究者でカナダの研究者の割合は0.xxというくらい低い。)。ただ、若干自国史よりもヨーロッパ研究者の割合が高く、28.36%とのこと。

記事では以上のような結果をグラフで示した後、「これで本当にいいの?」と投げかけている。そして最後に、この不均衡を是正するために、次の2つの提案をしている。

①大学は世界の主要地域を全てカバーできるように教員を揃えるべき

②歴史学部はもう少し領域のバランスを取った人選を行うべき

なお、Perspectives on Historyの2013年夏号では、この記事に関連した特集を行っており、記事の問題提起に応じた研究者からの応答の記事が5本掲載されている。また、この調査の詳しい内容は、下記のリンク先にある調査プロジェクトのサイトにもあるようだ。

 

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若干ななめ読みかつ端折りながら紹介したので、関心のある方は是非原文を。

これの日本版の研究をやりたい。

歴史リテラシーの涵養を目指す、ブリティッシュ・コロンビア大の“Historical Thinking Project”

カナダのブリティッシュ・コロンビア大学の歴史認識研究センター(Centre for the Study of Historical Consciousness)が行っている歴史教育プロジェクト“Historical Thinking Project”。

「歴史的意義の立証」「一次史料の利用」「アイデンティティの継続性と変化」「原因と結果の分析」「歴史的視点の習得」「歴史における倫理的次元の理解」という、歴史学の基礎である6つの考え方を教えることで、歴史リテラシーを持った生徒を育てようというもののようだ。

歴史リテラシーを身に着けた生徒は、歴史修正主義の議論を疑い、自身で史料を調査し、判断することができるようになるという。いわば、歴史リテラシーとは歴史の利用と乱用の間の差異を見抜くことができる、ということを意味するようだ。

ウェブサイトでは、上述の6つの考え方を教えるための授業計画のデータベースが公開されている。今のところそれがサイトのメインコンテンツの模様。

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ウェブサイト冒頭で問いかけられる、「学校で歴史を学んだ後、生徒はその知識を使って何を出来るようになるべきなのか?」は、中高だけでなく、大学の歴史教育にもいえることかと。

カナダにおけるPublic Historyのためのサイト“ActiveHistory.ca”

歴史研究者と一般市民・政策立案者・メディアとの間を結びつけるための支援を行う、カナダにおけるPublic Historyのためのウェブサイト。2008年9月にGlendon Collegeで開催された会議“Active History: History for the Future”での議論を形にしたものという。

このプロジェクトは、いつぞやこのサイトでも取り上げた、イギリスの“History & Pilicy”をモデルにしている。プロジェクト参加の研究者は現在カナダ国内の50名程度で、データベースに登録されているようだ。ウェブサイトでは、参加研究者によるペーパーが公開されたり、書評が掲載されたり、またPodcastも提供されている。また、カナダゆえに、サイトは英仏の2言語で作成されている。

c.f.

政策に歴史学が関わるために “History & Policy”というイギリスのプロジェクト

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パブリックヒストリーの実践は興味深いし、日本で取り組む上では参考になるだろう。

だが、それが、受け手側からどのような評価を与えられているのかについてはどのようにはかったらよいのだろうかと思う。

歴史学が社会に応えるために トロント大学歴史学部の“History and its Publics”と“Hacking History”

カナダのトロント大学歴史学部のイニシアティブとして2010年11月に開設されたウェブサイト。

この“History and its Publics”は、IT技術の進展と社会の変化がカナダ社会において学問と大学の役割を変化させつつあるとして、これまでのような教育と研究の在り方に対する危機感を背景に開設されたものである。社会からの圧力や要請に対して研究者個人が単発的に対応するのではなく、旧来の方法とデジタルメディアを結びつけることで、研究者集団によるアウトリーチ活動を構築する必要があるとしている。

サイトは、同大学のMatt Price氏(科学史・科学哲学)によるもののようだ。また、このサイトの一部として、授業の一部として、歴史学とDigital Humanitiesのクロスさせることを目的とした、“Hacking History”というサイトも公開している。

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コンセプトは賛成するが、まだ余り作りこまれていない様子。Hacking Historyのサイトに掲載されているリンクが、カナダにおけるDigital History関連を調べる上で役立ちそうか。

プログラミングを学びたい歴史研究者のための入門書“The Programming Historian”

2011年4月9日に、カナダ歴史・環境ネットワーク(Network in Canadian History & Environment / NiCHE)が公開した“The Programming Historian”は、コンピューターの知識をほとんど持っていないが、これからプログラムについて学びたいと考えている歴史研究者のための入門書である。

この書は、プログラミング言語の一つPythonを使ったプログラミングの基礎の解説本だ。執筆は、University of Western OntarioのWilliam J. Turkel氏とAlan MacEachern氏の二人が担当しており、ウェブサイトでHTML版とPDF版の二つをオープンアクセスで提供している。なお、The Programming Historian第一版のソースコードがGitHubで公開されている。

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序文部分で著者は次のように指摘しているが、最もなことだと思う。

「デジタルヒストリーにはウェブ上の資史料を使った作業が求められる。このことは、読者がブラウザのなかで研究する時間が多くなるということであり、研究をするためには、プログラミングのスキルを使えるようにならなければならないということを意味する。」

カナダにおける博士課程学生に対するアカデミー外への就職支援活動

2011年9月7日付けのThe Chronicle of Higher Educationに“Canada Prepares Young Researchers for Nonacademic Careers”という記事が掲載されている。

カナダにおいてもアカデミックポストは供給過剰となっており、博士課程の学生が大学等の研究職に就くことは難しくなっているようだ。

記事では、カナダのNatural Sciences and Engineering Research Council of Canadaが、理系の博士課程の学生に対して、アカデミー外への、すなわち一般企業等への就職を支援すべく提供している、コミュニケーションやリーダーシップ、知財管理等の研修プログラムについて紹介している。人文・社会系の学生には、Social Sciences and Humanities Research Councilが来年3月から同様のプログラムの提供を開始するようだ。

同じようなテーマでアメリカやイギリスでの話を記事で見ることがあるが、今度はカナダから。世知辛い、と嘆くだけではもうすまないだろう。

1871年のカナダ初のセンサスがデジタル化公開

Library and Archives Canadaが、2011年8月30日に、同国初のセンサスをデジタル化公開した。

史料は1871年のもので、当時のNew Brunswick、Nova Scotia、Ontario、Quebecの4つ地域をカバーしている。

デジタル画像は、データベースもしくはデジタル化マイクロフィルム画像で利用でき、その内容は、名前、年齢、出生地、国籍、宗教、職業等から検索可能という。