歴史研究者にとって電子書籍とは

アメリカ歴史学会(AHA)の”Perspectives on History”の2012年5月号に、“History E-books May Be Good for Reading, but Not (Yet) for Reviewing”という記事が掲載されている。

タイトル通りの内容で、「歴史研究者にとって電子書籍は、読むにはいいけど、レビューする際には(まだ)あまりいいものではない」というものだ。

記事の内容のポイントをいくつか取り上げると次の通り。

・AHAメンバー101人に対して、過去4年間AHAの賞の選考のために、本を電子媒体で受け取ることに関心がないと答えたのは68%であった。これに対し、電子媒体の方がよいと回答したのが8%で、23%はデジタル版の本でも構わないと答えた。

・上記調査で62%は現在電子書籍を読んでいると回答しており、全員が電子書籍に対してネガティブな印象を持っているわけではないことが分かる。このように、電子書籍を読むことに関して好意的な人が増えているのは明らかだが、電子書籍はテキストをレビューする際に現在行っている方法ではできない点に難点があるとされる。

・レビューする際の方法は、82%が印刷本への書き込みもしくはマーク付けを行うと答えた。余白にいつも/だいたい書き込むと答えたのは38%、参照のためポストイットを使うが32%、下線を引くと応えたのは29%だった。

・歴史書を読んでハイライトをすると応えたのは20%強に過ぎず、反対に(めったに)したことがないと答えたのは80%弱にもなることから、現状の電子書籍の機能で、ハイライトとコメント付与が可能となっているものの、調査の結果からは、それらはあまり必要ではない機能であることが示された。

・レビュー目的では、電子より紙がよいと答えた理由は、紙の方が飛ばし読みがしやすいこと、深く読み込む場合にとっては、脚注と引用との間の結び方に限界があること、電子書籍は書評を書いたり結果をまとめる際に邪魔になること等が挙げられた。

最後に結論として、「ボーンデジタルとなるなら話は別だが、調査結果からは、電子書籍は近い将来の差し迫った問題にはなっていないことが分かる」と指摘している。

せんだい歴史学Cafe: 第9回「西洋史の食いしん坊万歳!」 の参考文献

sendaihiscafe:

先日の放送、ご試聴いただき本当にありがとうございました。

今回の参考文献を紹介します。

・南直人「「近代的食生活」の現実―家計調査からみた世紀転換期ドイツの食物摂取量」『西洋史学』201、2001年
・梅村芳樹『ジャガイモ―その人とのかかわり―』古今書院、1984年
・フェリペ・フェルナンデス=アルメスト(小田切勝子訳)『食べる人類誌 火の発見からファーストフードの蔓延まで』早川書房、2003年

ヨーロッパにおけるジャガイモの普及(アイルランド、イギリス、フランス)に関しては、

・ラリー・ザッカーマン(関口篤訳)『じゃがいもが世界を救った―ポテト文化史―』青土社、2003年

せんだい歴史学Cafe: 第9回「西洋史の食いしん坊万歳!」 の参考文献

1921年英愛条約が電子書籍で無料公開

少し前、5月9日に、アイルランド王立アカデミー(Royal Irish Academy)のプロジェクト“Documents in Irish Foreign Policy”が1921年の英愛条約を初めて電子書籍化し、無料で公開した。アイルランドのDHネットワーク“Digital Humanities Observatory”とアイルランド国立公文書館との共同による。

フォーマットはEPUBとMobi、PDFとなっており、キンドルやiPad等で読むことができる。

2011年、各国において歴史と人権に関わる問題は何があった? “Network of Concerned Historians”が年次報告書を公開

特に歴史学の検閲や歴史研究者・アーキビスト・考古学者の迫害に関し、その情報発信と共有を行う国際的なネットワーク組織“Network of Concerned Historians”が、2012年の年次報告書を公開した。

年次報告は、アルファベット順に各国における歴史と人権にかかわる事件をピックアップしており、111ページにも及ぶ。

日本の項目では、「2011年3月30日に、独島の日本主権を主張する教科書を採択したこと」、「従軍慰安婦問題の日韓のやり取り」が記載されているが、言語上の問題からか、依拠している情報源が一方的なように思う。だとすると、他国の情報も同じだろうか。

一方的だと批判するよりも、協力するという方向に行きたいところ。

13世紀末から16世紀初頭までにカタルーニャ語で書かれた/翻訳された科学・技術関係史料データベース “Sciència.cat DB”

13世紀末から16世紀初頭にかけて、カタルーニャ語で書かれた、もしくはカタルーニャ語に訳された、科学・技術関係史料に関するデータベース“Sciència.cat DB”。これは、“Sciencia. cat”という、あまり知られていない/研究されていない中近世カタルーニャの歴史的な遺産へのアクセスを高める活動を行っている、バルセロナ大の研究グループが作成したもの。

データベースは、作品、マニュスクリプト、インキュナブラ(1800年まで)、文書館資料、著者名・翻訳者等の人名、二次資料等の参考文献等が収録されており、英語、スペイン語(カスティーリャ語)、カタルーニャ語で利用できる。

なお、作成したバルセロナ大の研究グループは、NarpanDBというカタルーニャにおけるDigital Humanities研究イニシアティブで提供している、1500年までにカタルーニャ語に翻訳された文献史料のデータベース“Translat DB”等の他のデータベースも、“Sciència.cat DB”を補うために活用してほしいとしている。

1400年から1900年までのロンドン同業組合の組合員データベース”Records of London’s Livery Companies Online”

1400年から1900年までのロンドンシティの同業組合(Livery Companies)における徒弟と職人に関するデータベース“Records of London’s Livery Companies Online”。組合への入会記録をデジタル化して提供している。

このRecords of London’s Livery Companies Onlineは、Centre for Metropolitan Historyの他、後述する4つのカンパニーとの共同プロジェクトとして進められている。

プロジェクトは、2008年からClothworkers’ Companyの記録のデジタル化から始まり、2010年にDrapers’ CompanyとGoldsmiths’ Companyが始まり、現在はMercers’Companyのデジタル化が行われているようだ。

今のところ搭載データは、Clothworkers’ Companyは1545-1908年、Draper’s Companyは1400-1900年までで、Goldsmiths’ Companyは1600-1700年のサンプルデータが搭載されている。Mercers’ Companyの史料は2013年初めにも完成するという。

せんだい歴史学Cafe: USTREAM番組 せんだい歴史学カフェ第9回「西洋史の食いしん坊万歳!」

sendaihiscafe:

USTREAM番組 せんだい歴史学カフェ第9回「西洋史の食いしん坊万歳!」

放送予定:6月26日(火)21-22時

「せんだい歴史学カフェ」は、仙台からお送りするUSTREAM番組です。
主に西洋史を研究している若手研究者有志が、歴史学の面白さをわかりやすく伝える
ために始めました。

第9回のテーマは「西洋史の食いしん坊万歳!」です。
人間は生きている限り、何かを食べていかなければなりません。
どんな時代にも、人は食べることに必死だったのです!

今回は、西洋史上の「食」にまつわるトピックを、楽しくとりあげていきたいと思い
ます。

せんだい歴史学Cafe: USTREAM番組 せんだい歴史学カフェ第9回「西洋史の食いしん坊万歳!」