アメリカ歴史学協会(AHA)の月刊誌“Perspectives on History”2013年4月号に、“Reform Time: Some Proposals to Help Solve the Job Crisis”という記事が掲載されている。執筆者は、US Naval War Collegeで軍事史等を教える研究者Nicholas Evan Sarantakesで、彼は“IN THE SERVICE OF CLIO”という歴史研究者のキャリアマネジメントをテーマとしたブログを運営している。
記事は、2011年に若手研究者の就職難の解決方針をAHA会長らが提案した記事“No More Plan B”を踏まえたものとなっている。Sarantakesは、“No More Plan B”での議論は重要としつつも、その内容が未来を向いたあいまいなものであると批判し、かわって自分の記事では、現在のAHA会員のためにAHAに対して具体的な提案をするのだとしている。
その具体的な提案というのが以下の8項目。
(1)AHAは、AHAが若手研究者の就職難にできることは何かについて話し合うような、カンファレンスのスポンサーをすること。
(2)AHAは、大学当局(学部長級)ができることは何かをテーマとしたカンファレンスのスポンサーをすること。
(3)K-12の歴史の先生のための分科会を作ること。
これは、歴史の教員になろうという若手研究者に対して、その仕事内容やアドバイス等を提供する分科会を想定したもの。
(4)AHAの刊行物に掲載する、若手研究者の就職先機関(考古学やPublic Historyの組織、資料保存を行うような政府機関等)の求人広告料を大幅に引き下げること。
(5)AHAの会長職を歴史学以外の分野から招くこと。
以前は政治学、図書館学、考古学等の史学隣接領域から会長になっていたが、WWII以降はそれが途絶え、もっぱら大学の歴史研究者に絞られてしまったとしている。そのため、他のキャリアへの視野を広げるためには、AHAのリーダーシップを他分野に広げる必要がある、とのこと。
(6)Alt-Academyの講演シリーズを行うこと。
歴史学を修めた後、現在は別の業界で働いている人を招いて、講演シリーズを開催する。
(7)週末に他分野の専門家を招いて、必要なスキルについてミニワークショップを開催すること。
Ph.D取り立ての若手研究者は他の分野の学位も必要なのか?インターンシップは重要なのか?等の問いに答えてもらう。
(8)歴史学の博士課程の講座を閉鎖するためのプログラムの開発
(1)~(7)は”症状”を和らげるためのもので、そもそもの問題は歴史学の博士号所持者が過剰に増えていることにある。したがって、供給を抑える必要がある。そのため、AHAは博士課程の募集を辞めるようなプログラムに対して、評価すべきだという。
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“AHA”を日本の別の機関の名前に変えると、結構参考になるように思う。(8)で賛否に大きく分かれそうだ。