月別アーカイブ: 10月 2011

グラスゴー大学のDigital Humanitiesプロジェクト一覧と中世スコットランドアイデンティティ研究のためのデータベース

スコットランドのグラスゴー大学人文学部によるDigital Humanitiesに関するプロジェクト一覧。全部で83件あるようだ。

画面右にあるタブクラウドを使ってテーマを絞り込むことができるが、“History”を選択して登場したのは、1件のデータベースだった。

“The Paradox of Medieval Scotland 1093-1286: Social Relationships and Identities before the Wars of Independence”というプロジェクトだが、これは、1093年から1286年の中世スコットランドの特許状(charterをそう訳してよかったか記憶が…)6000件以上をデータベース化したもの。

興味深いと思ったのが、データベース化の目的が中世スコットランドのアイデンティティ研究にあるとしている点。1093年から1286年までの間は近代スコットランドの基礎を作る時期であったそうだが、研究者Rees Daviesによると、ブリテン諸島の一部としてイングランド人の定住とアングロ・ノルマン化が進んだ時期にもかかわらずスコットランドが政治的な独立を維持した、いわばパラドキシカルな時期にあたるという。さらに、その独立が怪しくなってくると、ある意味でスコットランド意識に目覚めていったとされるが、しかし反対にイングランド人の移住や社会機構・文化のイングランド化によってスコットランド人とイングランド人との間の差が融解していった時期ともみなされる、さらにパラドキシカルな時期でもあるという。

このパラドックスを解くべく、近代スコットランドアイデンティティが1093年から1286年の間に(つまりスコットランド独立戦争以前に)どのように形成されたのかを調査するのが、このプロジェクトの目的だというわけだ。データベースでは、1093年から1286年の間、スコットランドで名前の残っている人物情報を調査できるという。サイトには、データベースの使い方の手引きも載せられていて親切仕様。

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学生のころ、アイデンティティ研究で結構な数の遺言状などを読み込んでいる方がいて大変そうだと思っていたが、データベースはこういう方面にも使えるのか、と。

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2012年に出版予定の“Debates in the Digital Humanities”が面白そう だ

2012年にミネソタ大学出版局(University of Minnesota Press)から、“Debates in the Digital Humanities”という、Digital Humanitiesの第一線で活躍する専門家から寄せられた29の論考を収録した本が出版されるようだ。編者はニューヨーク市立大学のMatthew K. Gold氏。

同書には、Digital Humanitiesの定義や理論、実践などのほかに、Digital Humanitiesに人種・ジェンダー・階級・セクシュアリティに関する観点が欠如していることや、DH実践家の中での多様性が不十分なレベルであること、DHの政治的コミットメントの欠落など、DHにおける欠点を指摘した論考や、Digital Humanitiesの教育・今後のあり方を論じた論文も収録される。

同書は2012年にまず印刷版が出版され、その後印刷版の議論を引き継いだ拡大版のような形で、オープンアクセスで公開される模様である。

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オープンアクセスで提供されているDigital Humanities関連本には以下のものがあるが、“A Companion…”よりはもう少し踏み込んで、“Digital History”ほど対象を絞らず、かといって“Hacking the Academy”ほど広げず、といった位置づけになるのだろうか。なんにせよ、オープンアクセスで提供してくれるのはありがたいこと。

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『スイス史文献目録』(Bibliographie der Schweizergeschichte)の1913-1974年刊行分がデジタル化公開

スイス国立図書館が、1913年から1974年までの『スイス史文献目録』(と訳していいのか知らないが)(Bibliographie der Schweizergeschichte/Bibliographie de l’histoire suisse)のデジタル化を完了し、retro.seals.chでインターネット公開を始めた。

これは、『スイス史文献目録』を1957年まで発行していたスイス歴史学協会との合意のもとに進められた事業とのこと。公開されたデータは、スキャンした後にOCRをかけているので(一応)全文検索も可能のようだ。

なお、1975年から1998年までの『スイス史文献目録』については、retro.seals.chとはまた別のデータベース“ Bibliography on Swiss History database”で利用できる。また、2012年春からは、1990年以降のものについても“ Bibliography on Swiss History database”で利用できるようになる様子。

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スイス史学史の研究に役立ちそう。

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IBM100年歴史をスタイリッシュに見せる“Historio”

1911年の創業から100周年のIBMが、この1世紀間に開発した技術や製品等の情報を見ることができるサイト。

メインは画面左に登場する円形のタイムライン。

円の中心を起点に、半径までを時間の幅としている。デフォルトでは円の中心が1890年で円周が2011年となっている。ちなみに年数の範囲は変更可能。

どういう順序で並んでいるかよく分からないが、大体、技術や製品などの登場年が古いものが12時のほうにあり、登場年が新しいものが順に時計回りに並んでいるようだ。

薄い青がタイムラインで、その中の濃い目の青が主要な出来事を表わしていて、タイムラインをクリックすれば画面右に抜き出され詳細な説明を見ることが出来る。また、複数のタイムラインを同時に選択することもできるので、比較してみることも出来るというらしい。

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社史の見せ方という点と複数のタイムラインを同時に扱うことが出来るようにする点が興味深いかと。

しかし、最初見たときは何の研究プロジェクトかと思った…

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歴史専攻の学生のためのTwitterアカウントリスト70(英語圏)

大学で歴史を専攻する学生向けに、歴史関係のTwitterアカウント70件のリストが公開されている。オンラインの教育リソース等の情報を提供しているOnline Collegesという情報サイトがまとめたもの。

リストは以下の9項目に分けて紹介されており、全て英語圏のもののようだ。

・歴史系のニュース (Daily History and News)

・テレビ番組等の情報 (Programming)

・歴史系出版関係 (Publishing and Publications)

・教育関係(Educations and Experts)

・博物館など(Museums and Organizations)

・アーカイブス・図書館(Archives and Libraries)

・歴史ファン(History Fun)

・特定ジャンルのもの(Genre Specific)

・専門家向け(For Professionals)

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研究室のHPでリンク集を載せているところが多いが、こういうものを掲載するのもありですな。

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ヘロドトスの『歴史』に登場する地名のマッピングから空間概念を探るプロジェクト“Hestia”

イギリスOpen UniversityのElton Barker氏(古典研究)が中心となって行われた研究プロジェクト。

ヘロドトスの『歴史』が潜在的に地中海世界を脱中心的/多中心的に理解していたものであったことを示すことと、『歴史』に出てくる登場人物がそれぞれ異なる空間概念を持っていたかどうかを検証することを目的としたものとのこと。

そのために、ヘロドトスの『歴史』で登場する地名情報のマッピングを行ったようで、この成果をまとめた論文が3本ほど著されている。ちなみに、GISシステムやらGoogle EarthでみるためのデータがCreative Commons Attribution Licenseで公開されている。

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日本学術振興会、人文・社会科学の国際化に関する研究会の最終報告書を公開

学術振興会に人文・社会科学の国際化に関する研究会というのが作られていたらしい。

2008年12月に文科省の委託を受けて、2009年5月29日に第1回の会合が開かれ、その後2011年7月14日の第10回まで行われた。

委託された調査内容は以下の通り。

① 「国際的に活躍している研究者の数と業績の位置付け」

② 「日本人の得意分野・不得意分野」

③ 「国際発信における問題点」

④ 「研究者研究拠点のネットワーク」

これらの項目を中心に、

人文学と社会科学における国際化がどのような現況にあるか、どのような問題を抱えているかについて分析を試み、東洋史学、社会学、法学、政治学、経済学の5分野を取り上げた。

とのことである。(p.1)

なお、人文系の、それも歴史系の学問の中で東洋史を取り上げているのは

日本の人文学の国際化の一事例として、学問伝統と可能性と課題を凝縮した形で体現する

から(p.3)、とのこと。

報告書はいろいろなテーマで議論されているので、ここではその紹介は割愛したい。ちなみに、最終章が要約となっているので、とりあえず全体を把握するには最終章から読み始めたほうがいい。

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東洋史に代表させる違和感もあるが、何より公開の仕方に疑問を感じた。

・まず、2009年に開始された研究会のページを、終わった後の2011年10月20日に初めて公開するのもおかしな話だが、さらにはページを公開しても、「最終報告書」の公開のお知らせについては、トップページはおろかそのページのニュース欄にも載せていないのは、見せたくない理由でもあるのではと勘ぐりたくなる。おそらくこの報告書をもとに文科省の人文学及び社会科学の振興に関する委員会は議論されるのだろう。

・どのような議論を経てこの最終報告書にまとめられたのかを後々知るためにも、研究会の配付資料や会議録は公開して欲しいと思う。(どうも見つからず。)

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