個人所蔵の地域史料を掘り起こしデジタル化する“History Harvests”というプロジェクト

American Historical Associationの月刊誌“Perspectives on History”の2013年1月号に、“History Harvests”を扱った記事が掲載されており、このほどそれが会員以外にも公開された。

“History Harvests”とは、University of Nebraska-Lincolnの歴史学部が2010年に始めたプロジェクトで、James Madison Universityも実施している。これは、学生が地域の個人宅に眠る史料(文書史料に限らない)を掘り起こし、デジタル化するというものだ。だが、単に新史料を発見するだけではない。地域あるいは家族の歴史が、アメリカというより大きな物語にどのように接続するのかを、参加者とともに検証し、議論し、そしてまとめられる。その目的は、これまで見えなかったアーカイブズや物語を可視化させ、公の空間に連れ出すことにあるとされている。

公開された“Perspectives on History”の記事には、前段で紹介した、“History Harvests”の定義や意義だけでなく、実際にプロジェクトを実施する上での9つの注意点がまとめられている。それは以下の通り(意訳している)。

1.地域には様々な歴史が存在するので、テーマ/焦点を絞って実施すること。

2.集めた史料をどのように利用し、どのように扱うのかについて、丁寧に説明をすること。

3.大学内外の機関と連携して実施すること。

4.大まかなコンセプトとガイドラインを決めたら、あとは学生の自主性にゆだねること。

5.実施前の広報は力を入れること。

6.作業を迅速に行えるようフローは維持すること。

7.史料所有者と会える機会は当日だけなので、その時にオーラルヒストリーと史料に関する情報を集めること。

8.参加者にプロジェクトのテーマについての知識を提供したり、それぞれの持ちよった史料についての情報を語りあう機会を提供すること。

9.機関と地域コミュニティとの間の橋渡しをすること。

History Harvestsのウェブサイトには、プロジェクトで集めた史料等のほか、授業のシラバスや広報ポスター等も公開されている。

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史料保存×Digital History×Public History×歴史教育のバランスのとれたプロジェクトだと思う。日本だと地域資料デジタル化研究会があるが、これに歴史教育が加わったもの、と考えればよいのだろうか。


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