イギリスの出版社団体が同国内公共図書館で電子ジャーナル8,400タイトルを無料提供 2年間限定のプログラム

2014年2月3日、イギリスのPublishers Licensing Society(PLS)の主導するプログラム”Access to Research”が、出版社団体・出版各社の協力を得て、同国内の公共図書館において電子学術ジャーナルの無料提供を開始した。2年間限定のパイロットプログラムとして行われる。論文タイトル数は150万超で、雑誌タイトルは、STM系が多いようだが社会科学領域も20%を占めていて、全部で約8,400点という。

協力している出版社は次の通り。

ALPSP, Bloomsbury Publishing, Cambridge University Press, Dove Press, Elsevier, Emerald, IOP Publishing, Nature Publishing Group, Oxford University Press, Portland Press, SAGE Publications, Science Reviews 2000 Ltd., Springer, Taylor & Francis, Versita, Wiley, Wolters Kluwer Health

さらに、ジャーナルの提供のためProQuestがSummonを提供している。

このプログラムは2013年に3か月間、国内の一部地域で実験的に行われ、それがこのほど全地方自治体にも開かれたようだ。プレスリリースによると、現在のところ、自治体の半数超が手続きを進めているという。

また、このプログラムの背景には、2012年に発表されて以来同国の学術情報流通に多大な影響を与えている”Finch Report”があり、そこにメジャーなジャーナルの出版社は公共図書館に学術論文のフリーアクセスを提供すべきだと提言されていたことにある。この提言に応えるべく、このAccess to Researchは立ち上げられたそうな。
————
若手研究者の資料アクセス問題に対する解の一つとして実に興味深い。

ちなみに、利用は、公共図書館内での端末閲覧のみ、なのだろうか。やはり、アクセスのみでプリントアウトは不可なのだろうか。

広告

人文系若手研究者のキャリアパスを考える#Alt-Academyプロジェクトが新体制に – 新規エッセイシリーズ公開など

メディア研究者のコミュニティネットワークであるMediaCommons内の一プロジェクトである#Alt-Academyが、このほど新体制に代わり、再出発となった。

#Alt-Academyは、2011年にバージニア大学のScholars’ LabのBethany Nowviskieが立ち上げた、人文系若手研究者のキャリアパスの体験談等を集めるプロジェクトである。日本と同様にアメリカでも人文系若手研究者の就職は厳しく、いわゆる、専門分野の研究者にならず(あるいはなれずに)、大学内で別の関連ポストに就いたり、博物館や図書館、学術出版社、歴史協会、公的な人文系関係機関へ就職したりしている。これらの体験談や実践例を集めることで、他分野のキャリアパスへ進むことに対する人文系研究者のネガティブな意識を変えること等を目指している。

この度の新体制移行では、

・メイン編集者が上述のBethany Nowviskieから、MLAのMLA Commonsでエディタを務めるKatina Rogersに代わった。
・ エモリー大学のDH研究者Brian Croxall編集による新エッセイシリーズLooking for Signpostsがスタート
・および、今後の定期的なサイト更新を予定
・これまでのBethany Nowviskieが編集してきた32名によるエッセイ全24編を、PDF、EPUB形式で電子書籍としてまとめた。

とのこと。

ちなみに、Katina Rogersにはこれまでに人文系若手研究者のキャリアパスと大学院教育に関する調査研究の実績があり、それらも#Alt-Academyプロジェクトの一部(あるいは背景)として公開されているので、読んでおきたい。

———-

若手研究者問題では、図書館利用の問題など、若手がいかに”研究者としてありつづけるか”、そのための議論を求められるが、自分は人文学研究が存続し続けるためには、それらの議論と同じほど、キャリアパスの問題は重要だと思っている。ので、今後はこちらの議論も進めていきたいところ。

在野の歴史研究者が電子リソースにアクセスするために ― 同窓会組織の利用

Uncommonplace Bookという在野で活動する歴史研究者Elizabeth M. Covartさんのブログで、”Getting Access: Alumni Libraries”という記事があった。AHAのTwitter経由で発見したもの。

(在野の)歴史研究者が必要な電子リソースをどうやって利用すればよいか、図書館による卒業生向けの電子リソースの提供の優良事例として、ペンシルバニア州立大の同窓会組織が紹介されている。

ただ、かような形でわざわざ紹介されているのだから、やはりアメリカでも大学の外に出たら研究環境として困っているのだろうか。
———
国内でJSTORのアラムナイプログラムを実施しているところってあるんだろうか。

西洋史若手研究者問題アンケート調査報告会のお知らせ

【転送歓迎】
西洋史若手研究者問題アンケート調査報告会のお知らせ

※チラシPDFは以下のURLよりダウンロードしてください。
https://docs.google.com/file/d/0BwaWDVN0tXzWc3BrVjg2TE9SRVk/edit?usp=sharing&pli=1

【日時】2013年5月12日(日)17時30分~

18時45分(17時開場)

【会場】京都大学文学部新館 第7講義室
http://www.bun.kyoto-u.ac.jp/ja/about/access/

※本企画は同日に開催される西洋史学会大会とは関係ありません。
お問い合わせの際には、下記のメールアドレスまでご一報ください
ますよう、お願い申し上げます。

※西洋史若手研究者問題検討グループについては、以下のホーム
ページをご覧ください。
https://sites.google.com/site/futurehistoriansjp2012/home

【参考文献】
西洋史若手研究者問題検討グループ「西洋史若手研究者問題アンケー
ト調査――中間報告書」(2013年3月)
https://docs.google.com/file/d/0BwaWDVN0tXzWNmM4THJuTlU3REE/edit?usp=sharing&pli=1

崎山直樹「崩壊する大学と『若手研究者問題』――現状分析と展望」
『歴史学研究』第876号(2011年2月)
http://rekiken.jp/rekiken876_37to46_SakiyamaNaoki.pdf

菊池信彦「若手研究者問題と大学図書館界――問題提起のために」
『カレントアウェアネス』第315号(2013年3月)
http://current.ndl.go.jp/ca1790

【主催】西洋史若手研究者問題検討ワーキンググループ
※参加申込みおよび参加費は不要です。

【記事紹介】歴史学若手研究者の就職難の解決に向けた8つの具体的な提案

アメリカ歴史学協会(AHA)の月刊誌“Perspectives on History”2013年4月号に、“Reform Time: Some Proposals to Help Solve the Job Crisis”という記事が掲載されている。執筆者は、US Naval War Collegeで軍事史等を教える研究者Nicholas Evan Sarantakesで、彼は“IN THE SERVICE OF CLIO”という歴史研究者のキャリアマネジメントをテーマとしたブログを運営している。

記事は、2011年に若手研究者の就職難の解決方針をAHA会長らが提案した記事“No More Plan B”を踏まえたものとなっている。Sarantakesは、“No More Plan B”での議論は重要としつつも、その内容が未来を向いたあいまいなものであると批判し、かわって自分の記事では、現在のAHA会員のためにAHAに対して具体的な提案をするのだとしている。

その具体的な提案というのが以下の8項目。

(1)AHAは、AHAが若手研究者の就職難にできることは何かについて話し合うような、カンファレンスのスポンサーをすること。

(2)AHAは、大学当局(学部長級)ができることは何かをテーマとしたカンファレンスのスポンサーをすること。

(3)K-12の歴史の先生のための分科会を作ること。

これは、歴史の教員になろうという若手研究者に対して、その仕事内容やアドバイス等を提供する分科会を想定したもの。

(4)AHAの刊行物に掲載する、若手研究者の就職先機関(考古学やPublic Historyの組織、資料保存を行うような政府機関等)の求人広告料を大幅に引き下げること。

(5)AHAの会長職を歴史学以外の分野から招くこと。

以前は政治学、図書館学、考古学等の史学隣接領域から会長になっていたが、WWII以降はそれが途絶え、もっぱら大学の歴史研究者に絞られてしまったとしている。そのため、他のキャリアへの視野を広げるためには、AHAのリーダーシップを他分野に広げる必要がある、とのこと。

(6)Alt-Academyの講演シリーズを行うこと。

歴史学を修めた後、現在は別の業界で働いている人を招いて、講演シリーズを開催する。

(7)週末に他分野の専門家を招いて、必要なスキルについてミニワークショップを開催すること。

Ph.D取り立ての若手研究者は他の分野の学位も必要なのか?インターンシップは重要なのか?等の問いに答えてもらう。

(8)歴史学の博士課程の講座を閉鎖するためのプログラムの開発

(1)~(7)は”症状”を和らげるためのもので、そもそもの問題は歴史学の博士号所持者が過剰に増えていることにある。したがって、供給を抑える必要がある。そのため、AHAは博士課程の募集を辞めるようなプログラムに対して、評価すべきだという。

—————————

“AHA”を日本の別の機関の名前に変えると、結構参考になるように思う。(8)で賛否に大きく分かれそうだ。