査読を受け、かつデジタル形式で研究書を刊行する4つのモデルとは?

2012年11月16日に、ペンシルバニア大の歴史学部の院生向けに開催されたワークショップ“Researching, Writing and Publishing History in the Digital Age”で、ハートフォードトリニティカレッジのJack Dougherty准教授が招待講演を行っている。

講演は、「研究者にとってのデジタル出版環境の激変」をテーマとしたものだが、6分という短い時間であるため、あらかじめ10月30日に氏が自分のブログで、講演のコンセプトとなるものを例示している。それが、タイトルにある「査読を受け、かつデジタル形式で研究書を刊行する4つのモデル」である。

そしてそのモデルとは以下とのこと。

①電子書籍(印刷版をただ電子化したものから、デジタルコンテンツを駆使したデジタルならではのものまで存在)

②ガイド・サイト(紙または電子で刊行した研究書で扱うことができなかったものを、フリーアクセスのサイトを構築して提供するというもの。)

③ドラフト版の公開(ドラフト段階の原稿を公開して意見を募るオープンピアレビュー)

④オープンアクセス出版

ただし、いきなりあれこれを始めるのは勇気がいるものなので、さしあたり歴史系の院生は、カンファレンスペーパーをデジタル版で共同執筆・編集するところから始めたらどうか?と提案している。そのほか、ブログ記事では、4つのモデルにそれぞれの実例と、記事最後で参考になる論文数編が挙げられている。

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要するに、単に紙でやったことをデジタルにしましたということではない、ということだろう。当たり前といえばそうだが、歴史叙述の変化(の可能性)の一つとして考えておきたい。

歴史学の学術コミュニケーション新プラットフォーム“American History Now”公開

2012年10月17日、紙の学術雑誌の持つ欠陥と限界を超えることを目指して作られた、歴史学(アメリカ史)の学術コミュニケーションの新プラットフォーム“American History Now”が公開された。Digital Humanities NowやGlobal Perspective on Digital History等と同じくPressForwardを利用して作成されている。

American History Nowの一つの機能として、レビューの投稿とコメント付与を通じての、議論の場の提供があげられる。American History Nowは、ウェブ上にあるアメリカ史に関するレビューを集め、また誰でもユーザは読んだ本のレビューを投稿できるようになっている。また、他のユーザはそのレビューに対してコメントをつけることで、議論ができるように作られている。そしてもう一つの機能は“Research Notebooks”、いわゆるブログである。ユーザがアイディアや研究のネタ等を投稿して、それに対して議論を行ったり、ヒントを得ようというもの。

学術コミュニケーションを考え直す場を作りたかったと述べているように、要するに、American History Nowは、従来では広まらなかった、論文未満の、しかし忘却するには惜しい、歴史学の情報を掬い上げ、それをウェブに乗せてオープンにしていくもの、と言えるだろう。

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今の仕事を歴史学の分野に移すとしたらどのようなやり方ができるだろうか、という考え続けてきた問いの一つの答えだと思う。さてどうなっていくか。注目せざるを得ない。

アメリカの奴隷解放150周年記念情報サイト“Emancipation Resource Portal”

アメリカの人文科学基金(National Endowment for the Humanities:NEH)による奴隷解放150周年記念ウェブサイト“Emancipation Resource Portal”。

NEHは今年2012年9月17日のNational Constitution Dayにある一連のイベントのホスト役を務めるとかで、このポータルサイトでは、そのイベント情報(9月17日にスミソニアン博物館で開催される南北戦争研究者のディスカッションの動画配信や、一次史料をつかった高校・大学生のコンテスト)と、インターネット上にある人文学関係の教育リソースをまとめた“EDSITEment”から、奴隷解放に関する資料等を提供している。

南北戦争や奴隷制の研究者には有用かと。

デジタル技術×文化に関するポータルサイト“Digital Meets Culture”

ビジネスコンサルタントやソフトウェア開発等を手掛けるイタリアのPromoterという企業による、デジタル技術と文化の交差領域に関する情報を提供するポータルサイト“Digital Meets Culture”。サイト運営は、PromoterのGMで、2002年以来イタリアの文化遺産省のアドバイザーなどを行うAntonella Fresa氏ら18名(メイン9名)の共同で行われている。

サイトでは、DH系はもちろんのこと、それよりも広く主にヨーロッパ圏のデジタル文化に関する話題やイベント情報も提供している。DHだけでなく、MLAのネタも広く拾うためには、定期的に眺めておいてもよいサイトかもしれない。

せんだい歴史学Cafe: USTREAM番組 せんだい歴史学カフェ第10回「けんちく!」

sendaihiscafe:

USTREAM番組 せんだい歴史学カフェ第10回「けんちく!」

放送予定:731日(火)21:0022:00 

「せんだい歴史学カフェ」は、仙台からお送りするUSTREAM番組です。
主に西洋史を研究している若手研究者有志が、歴史学の面白さをわかりやすく伝えるために始めました。

10回のテーマは「けんちく!」です。
西洋史上では古代から現代まで、われわれの興味を引いてやまない建築物が多々存在しています。

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