“モバイル×歴史教育” HASTACのDigital Historyブログシリーズ第2弾公開

HATACのDigital Historyグループによるシリーズ記事が3月3日に公開された。毎回、3つのDigital Historyプロジェクトを取り上げ、その研究者を招いてグループインタビューするというもので、今回はその第2弾にあたる。

今回のテーマは、歴史教育におけるモバイル技術(“Mobile histories: How mobile technologies transform history teaching”)で、記事はナショナル、州、地方(都市)の歴史と、大きく3つに分けられている。それで、ナショナルヒストリーにはアメリカの議会図書館によるプロジェクト”Teaching with Primary Sources”が、州の歴史についてはミネソタ歴史協会が、最後に地方(都市)の歴史に関してはClark Street Comminity Schoolの教員によるモバイル端末を利用した経験が紹介されている。

取り上げられている全てのプロジェクトでは、ARISというモバイル向けオープンソースプラットフォームが利用されているとのことで、これも興味深いと思う。

—————————

「モバイルと歴史教育」と聞くと、なんとなく「地域の歴史を…」という視点のものだと思っていたが、LCのプロジェクトを引っ張ってくるとは思わなんだ。ただ、LCのインタビューはいまいちなのが残念。

広告

スペインの歴史・社会科教育のためのリソース集

バルセロナ大学のJoaquim Prats Cuevas教授らが運営している歴史・社会科教育のためのポータルサイト“Histodidactica”が、歴史・社会科関係のリンク集を作って公開している。今回初めて公開されたのかどうかは不明。

リンク集は大きく以下の8つに分類されている。

1. 教育リソース一般のポータルサイト(歴史・社会科を含む)

2. 雑誌や論文リポジトリ等

3. ブログやウェブサイト

4. 史料、歴史をテーマにしたリンク集や要約類

5. メディアテカ(メディア+図書館)、電子ジャーナル関係、博物館等

6. 教室で使えそうな地図等

7. 統計データ

8. 歴史や社会科教育雑誌

かなりの量の情報がまとめられているので、スペインの歴史教育だけでなく、Digital Historyの資料としても重宝しそうだ。

デジタルヒストリーと歴史教育のためのリソース作成プロジェクト“Digital History and Pedagogy Project”

オンライン環境での歴史教育と学習のためのツール・リソースの作成に焦点を当てたプロジェクト“Digital History and Pedagogy Project”(DHPP)。プロジェクトでは歴史学関係リソースを作成し、その過程の中で、k-12の授業や大学の講義で利用できるリソース作成のベストプラクティスを示すのが狙い。

DHPPでは、1864年3月10日から1865年4月12日までリンカーンが書いた電報のメモ書きをデジタル化し、それが書かれた日に発信するプロジェクト“The Lincoln Telegrams”など、6件のDigital History関連のプロジェクトが行われている。ちなみに、The Lincoln TelemgramsにはiPadアプリもある。

また、DHPPは、広い意味でのDigital History関連のウェブリソースや資料等を紹介する共同運営ブログ“Exploring History Online”や、Digital Histor教育に携わる関係者向けのSNS“Teaching Digital History”(残念ながら更新が止まっている様子)、Digital Hisory教育と学習に関連する方法やアイディアなどを紹介するブログ“Learn Digital History”等も運営している。

——————

このDHPPの運営母体がよくわからないが、サイトトップにバナーがあるノースカロライナ州立大の研究所なのだろうか。また、あまり更新されなくなっているようだ。

スタンフォード大研究グループによる高校歴史教育改革プロジェクト“Reading Like a Historian”

Reading Like A Historian from Abby Reisman on Vimeo.

米スタンフォード大学の研究グループStanford History Education Groupによるプロジェクト“Reading Like a Historian”は、サンフランシスコの高校と共同で行われている、高校の歴史教育カリキュラムの改革プロジェクトだ。

これは、何か指定のテキストを使って授業するのではなく、生徒が4~5人グループを作って、ベトナム戦争や女性参政権、大恐慌等といったアメリカ史上重大な意義を持つ出来事について、当時の雑誌やメモ、スピーチ、歌、写真、イラスト等を使って、「歴史家のように読む」訓練を行うというもののようだ。

とはいえ、何でもアリというわけではなく、そのトピック(例えば、独立宣言とか)で扱う中心的な問いがあらかじめ設定されており、それについての指定されている研究者の文献や史料等を用いながら、細かく順序だてて授業が進められるようになっている。そのような授業の詳しい組立方等については、プロジェクトのサイトにカリキュラムも公開されているので、そちらをご参照のこと。

ちなみに、このスタンフォード大の研究グループには、ほかにも歴史教育に関するプロジェクトを実施していて、たとえば議会図書館とのコラボで、デジタル化された一次史料を教育現場で利用するための“Teaching with Primary Sources Program”や、Read Like a Historian向けに一次史料を提供するサイト“Historical Thinking Matters”等がある。

————————-

そういえば、以前このブログで取り上げたブリティッシュ・コロンビア大の“Historical Thinking Project”が、“Reading Like a Historian”に似た取組みと思われる。

(ずいぶん前に、確か欧州歴史教科書の話の中で、ドイツでもこのような取り組みが行われていると紹介した文献があったのを見たような。)

日本ではこういう歴史の授業というのは行われているのだろうか。

歴史教育にデジタル技術を活用したい教員のためのリソースサイト“Teaching History with Technology”

EdTechTeacherが公開している、主に小学校から高校までの歴史教育や社会科教育に役立つリソースサイト“Teaching History with Technology”。

作成者はEdTechTeacherの共同ディレクタのTom Daccord氏らで、氏自身も歴史教育に15年間携わった経験をお持ちという。

ウェブサイトには、授業計画や授業で使えるコミック、電子書籍、ゲームの他に、教員の能力向上に役立つポッドキャストやパワーポイント、マップの使い方の情報、また、教育研究に役立つマインドマップやソーシャルブックマークの使用例、宿題の出し方やiPad等のアプリの情報などなど…、歴史教育(社会科教育)に関連しそうな様々な情報やリソースがまとめられている。

ちなみに、EdTechTeacherは、歴史教育に役立つサイト1,200件以上のリンクをテーマごとに分けてまとめたポータルサイト“Best of History Websites”も提供している。

歴史学専攻の学生は何を学ぶべきか、何ができるようになるべきか? アメリカ歴史学会が全米規模で統一指針を構築する“Tuning Project”を開始

2012年2月13日に、アメリカ歴史学会(AHA)がLumina Foundationの助成のもと、“Tuning Project”という全米規模の新たなプロジェクトの開始を発表している。

このTuning Projectは、大学での歴史教育・歴史研究の核とは何か、歴史学専攻の学生は何を学ぶべきであり、学位(準学士、学士、修士)取得時に何ができるようになっていなければならないかについて、全米規模で一つの指針を構築しようというものである。プロジェクトの主担当は、Anne Hyde氏 (Colorado College)と Patricia Limerick氏(University of Colorado Boulder) の二人で、国内60以上の大学から研究者が参加するという。

より具体的に、プロジェクトの目的として以下の3点が挙げられている。

①歴史学の核となる能力、思考様式、必要とされる知識を示す。

②学生・企業・文化に対し、歴史学固有の価値を表現するための明確かつ共通の言語様式を作り上げる。何を、そしてなぜ学んでいるのかをはっきりと自覚できる学生が、その後の生涯学習やキャリア形成、市民としての社会参加に学問をよりよく結びつけられるようにする。

③歴史研究者が、教育者としての成果測定において、自組織で使われるシステムを作れるような全米規模の枠組みを提供する。

このような、大学における歴史学の意義を国内で統一させようという「チューニング」は、10年ほど前にヨーロッパで始まったもので、以来世界的に広まっているものの、アメリカでは地方レベルにとどまるという。

今後は、2012年6月と2013年2月にプロジェクト参加研究者が会合をもち、歴史学を特徴づけるスキルや方法論等についてのドラフトを作成し議論するとともに、講義の場での実践を経て練り上げられる予定とのこと。

AHA会長のJames Grossman氏は「このプロジェクトはAHAが力を入れている、歴史研究者の間の、および歴史研究者と一般市民との間のコミュニケーション促進の一部をなすものである。」とコメントしている。

————————

歴史教育の縛りになってはまずいだろうが、歴史学を修めるとこういうことができるんですよ、と示すには必要なことと思う。興味深いプロジェクト。

National Humanities Center、アメリカ高校教師向けのアメリカ史リソースサイト“America in Class”を公開

2011年10月19日に、アメリカのNational Humanities Centerが高校教師向けにアメリカ史の授業用資料の提供サイト“America in Class”を公開している。

サイトでは、一次史料や二次資料、アメリカ史やアメリカ文学研究の第一人者によるエッセイ、オンラインセミナーなどを提供しているようだ。また“Lessons”という項目もあって、そこでは背景を含めた史料紹介と、生徒とのディスカッションをする際の議論をどのような方向性に持っていけばよいかについても教えてくれるという。

———

歴教協ってこういうことはしないのだろうか、と思ってサイトを見てみたら、明日の授業に使える小学校社会科というデジタル資料なるものを売っている(!)ようだ。アメリカを礼賛するつもりはないが、いろいろちがうなと。

史学史のように人文学のなかの一つの専門の歴史ではなく、「人文学」史なる観点から論じられるようになりたいと思う。