日本学術振興会、人文・社会科学の国際化に関する研究会の最終報告書を公開

学術振興会に人文・社会科学の国際化に関する研究会というのが作られていたらしい。

2008年12月に文科省の委託を受けて、2009年5月29日に第1回の会合が開かれ、その後2011年7月14日の第10回まで行われた。

委託された調査内容は以下の通り。

① 「国際的に活躍している研究者の数と業績の位置付け」

② 「日本人の得意分野・不得意分野」

③ 「国際発信における問題点」

④ 「研究者研究拠点のネットワーク」

これらの項目を中心に、

人文学と社会科学における国際化がどのような現況にあるか、どのような問題を抱えているかについて分析を試み、東洋史学、社会学、法学、政治学、経済学の5分野を取り上げた。

とのことである。(p.1)

なお、人文系の、それも歴史系の学問の中で東洋史を取り上げているのは

日本の人文学の国際化の一事例として、学問伝統と可能性と課題を凝縮した形で体現する

から(p.3)、とのこと。

報告書はいろいろなテーマで議論されているので、ここではその紹介は割愛したい。ちなみに、最終章が要約となっているので、とりあえず全体を把握するには最終章から読み始めたほうがいい。

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東洋史に代表させる違和感もあるが、何より公開の仕方に疑問を感じた。

・まず、2009年に開始された研究会のページを、終わった後の2011年10月20日に初めて公開するのもおかしな話だが、さらにはページを公開しても、「最終報告書」の公開のお知らせについては、トップページはおろかそのページのニュース欄にも載せていないのは、見せたくない理由でもあるのではと勘ぐりたくなる。おそらくこの報告書をもとに文科省の人文学及び社会科学の振興に関する委員会は議論されるのだろう。

・どのような議論を経てこの最終報告書にまとめられたのかを後々知るためにも、研究会の配付資料や会議録は公開して欲しいと思う。(どうも見つからず。)

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「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)に基づく体制整備の実施状況報告書について(分析結果報告)」 文科省が公表

文科省が、「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)に基づく体制整備の実施状況報告書について(分析結果報告)」を9月5日に公表している。

趣旨は以下の通り。

文部科学省では、「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」(平成19年2月15日文部科学大臣決定)(以下、「ガイドライン」という。)第7節に基づき、ガイドラインを踏まえた機関における不正防止の体制整備等の実施状況についての報告書(以下、「報告書」という。)の提出を機関に求めている。

機関から提出された報告書について、その記載内容の分析を行うとともに、別途実施した現地調査結果の分析を併せて行い、機関におけるガイドラインへの対応状況を整理した結果をここに報告するものである。

機関におかれては、この分析結果報告を参考にして検討し、不正防止の適切な体制整備等に取り組んでいただきたい。

西洋古典・古代史研究におけるDigital Humanities活用状況をまとめた報告書 “Rome Wasn’t Digitized in a Day”: Building a Cyberinfrastructure for Digital Classicists

Council on Library and Information Resourcesによる、西洋古典・古代史研究におけるDigital Humanitiesの導入の現状をまとめた報告書。古代ギリシア・ローマ・中近東の古典研究(約AD.600年までを対象)におけるデジタル技術を活用したプロジェクトなどをレビューしている。

報告書は、大きく以下の6つに分かれている。

①Multidisciplinary classical digital libraries: Advanced technologies and services

②The disciplines and technologies of digital classics

③The use and users of resources in digital classics and the digital humanities

④Overreview of digital classics cyberinfrastructure

⑤Building a humanities cyberinfrastructure

⑥Overview of large cyberinfrastructure projects

さすがに古代ギリシア・ローマは層が厚いな。すばらしい。この報告書は邦訳されても良いものと思う。

文科省による「博士課程修了者の進路実態に関する調査研究」

文科省が、平成23年3月付けで「博士課程修了者の進路実態に関する調査研究」を公開している。

いろいろとデータを提示していて興味深いものだが、人文科学系博士課程修了者に関する調査結果のまとめ(pp. 92-93.)としては、

人文社会科学系の博士課程修了者の進路については、そもそも進路把握率が非常に低く、判明している中ではその多くが大学・研究機関への就職となっており、理系分野に比べキャリアパスの多様性は低い。背景には、「博士課程≒研究者養成」の認識及び実態があるものと想定されるが、今後当該分野の博士課程修了者の活躍の場を広げるためには、まず現状における多様なキャリアパスを提示し、博士課程終了後の進路の可能性を提示していくことが重要である。 

とされている。

だが、生活がかかっているとはいえ、それまで研究者として生きることを念頭においていた者が、非アカデミックなキャリアへ舵を切るときの精神的な「苦痛」や、研究への思いを断ち切ることが出来るかどうかという点について報告書で指摘されていないのは、やはり問題だと思う。単に「多様なキャリアパス」を示せば良いというものではないと思うが。

  • 「博士課程修了者の進路実態に関する調査研究」

http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/itaku/1307208.htm