ヨーロッパ史学史研究のためのリソースまとめ(イギリス・オランダ・スウェーデン・アイルランド・ポルトガル・スペイン・EU)

備忘のため、ヨーロッパの各国における歴史学論文・歴史家のデータベースをいくつかまとめておく。今度も見つけたら追加予定。

イギリスのInstitute of Historical Research作成。19世紀後半以降を対象。歴史研究者や研究機関、ジャーナル、テーマ、その他(論文・イメージギャラリー・インタビュー等)をまとめている。

オランダ王立図書館(Koninklijke Bibliotheek National Library of the Netherlands )とホイヘンス協会(the Huygens Institute for the History of the Netherlands:訳が不安)によるオランダ史文献テータベースプロジェクト。20万以上のタイトルが収録。

スウェーデン国立図書館によるスウェーデン史文献テータベース。1771年から2010年までが対象。

Ref:
http://www.kb.se/english/find/bibliographies/historical/

1930年代以降のアイルランド史に関する文献データベース。2013年10月現在で84,000件以上。

ポルトガル国立図書館とリスボン歴史学センターによる、ポルトガルの歴史家事典。歴史家だけでなく、研究機関・雑誌等もまとめられている。

1900年以降のスペインの歴史家ポータル。Biblioteca Virtual Miguel de Cervantesに収録されているものに限る。

13の欧州諸国から15のプロジェクトによる、トランスナショナルな歴史学研究の促進を目的とした共同プロジェクト。

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上を見ると国立図書館が関わるケースが多いように思う。ナショナルヒストリーだから、なのだろうか。

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「アメリカとカナダ、イギリスの歴史研究の約75%がヨーロッパと北米を対象にしている」

という結果がでているそうな。アメリカ歴史学協会の月刊誌Perspectives on Historyの2013年5月号に掲載されている、Luke ClosseyとNicholas Guyattらの”It’s a Small World After All The Wider World in Historians’ Peripheral Vision”という記事のお話。これは、アメリカ、カナダ、イギリスの歴史研究者2400人の研究対象地域を調査した結果に基づく。

調査の結果、タイトルに書いた通り、米英加のその3か国の全歴史研究のうち、3/4以上(約75%)がヨーロッパとカナダとアメリカを対象にしていることが分かったという。細かく言うと、51.9%がヨーロッパ、北米が25.4%で、極東史は9.4%しかない。さらに記事では、各地域を占める世界人口の割合と研究の比率を比較してもいる。

3か国それぞれでの研究対象地域をみると、全体的に、アメリカの研究者はその3か国のうちで”比較的”様々な国・地域の研究をしているが、イギリスの研究者は自国の研究をしている割合が高いという。具体的には以下の通り。

・アメリカの研究者の歴史研究の約68%が北米とヨーロッパを対象にしたもの(アメリカの研究者のうち、アメリカ史を研究している人は33.3%)。ただし、アメリカの研究者はイギリスやカナダに比べて中東やラテンアメリカの研究の割合は高い。

・イギリスの研究者の41.2%がイギリスの研究をしている。次に多いのがヨーロッパを対象にしたもので36.12%、アメリカ史は6.14%。つまり、イギリスの研究の84%がヨーロッパとイギリスと北米を対象にしたものという。

・カナダの研究者の26.83%がカナダの研究をしている(アメリカの研究者やイギリスの研究者でカナダの研究者の割合は0.xxというくらい低い。)。ただ、若干自国史よりもヨーロッパ研究者の割合が高く、28.36%とのこと。

記事では以上のような結果をグラフで示した後、「これで本当にいいの?」と投げかけている。そして最後に、この不均衡を是正するために、次の2つの提案をしている。

①大学は世界の主要地域を全てカバーできるように教員を揃えるべき

②歴史学部はもう少し領域のバランスを取った人選を行うべき

なお、Perspectives on Historyの2013年夏号では、この記事に関連した特集を行っており、記事の問題提起に応じた研究者からの応答の記事が5本掲載されている。また、この調査の詳しい内容は、下記のリンク先にある調査プロジェクトのサイトにもあるようだ。

 

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若干ななめ読みかつ端折りながら紹介したので、関心のある方は是非原文を。

これの日本版の研究をやりたい。

考古学史オーラルヒストリープロジェクト“Personal Histories Project”

ケンブリッジ大のMcDonald Institute for Archaeological ResearchのリサーチフェローPamela Jane Smithが主催する研究プロジェクト“Personal Histories Project”が興味深い。Pamela Jane Smithさんは、イギリスとカナダの20世紀の考古学史を専門とする研究者。

“Personal Histories Project”では、シニアの考古学研究者を招いて、研究上の思い出や人生について語ってもらう講演会を開催し、それを記録するというオーラルヒストリープロジェクト。考古学史の史料収集とその蓄積が目的だが、その講演会の記録は、大学のサイトで公開されており、集めた資料(史料)を教育でも活用できるようになっている。

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(日本の)歴史学界でも、ここ数年、高齢の研究者による思い出語りや史学史上の記録のような文献の刊行が相次いでいる印象があるが、こういった講演動画を公開するというのもやってほしいなぁと。(公開される側は嫌がるかもしれんが。)

カルロ・ギンズブルグのインタビュー講演動画「ユダヤ人であるということ、ユダヤ人になるということ」

ニューヨーク公共図書館のウェブサイトで、カルロ・ギンズブルグのインタビュー動画が公開されている。(2013年2月4日付)

タイトルは、“BEING JEWISH, BECOMING JEWISH: a conversation with CARLO GINZBURG”。ギンズブルクは、2012年に自伝的エッセイ集”Threads and Traces: True False Fictive”を刊行しているが、これをベースに自分の出自であるユダヤ人であるということ、ユダヤ人になるということ、そして研究の3者の関わりについて語っているようだ。

歴史研究者と一般市民の過去の認識方法の違いを主題とした“Subjecting History”

Trevor R. GetzとThomas G. Padillaの二人が編集する“Subjecting History”がオープンレビュー形式で公開されており、執筆分担者が募集されている(11月15日まで)。

この本は、「アカデミックな歴史学は過去を十分に表わしているのか?」「ノンアカデミックな人の過去の理解の仕方とアカデミックな歴史学の過去の認識の在り方は対立するのか、あるいはしないのか?」「対立する解釈を無視せずにアカデミックな歴史学が過去をよりよく表現するための方法とはどのようなものか?」という問い、いわば、歴史学的な歴史認識と一般市民の歴史認識の違いをテーマとしたもの。また、“Subjecting”という言葉には、歴史というものが文章の中で議論されている極めて重要なトピックであるということを示す意図と、編者として歴史をもうすこし市民の中に“投げ出したい”という意図、の2つの意味が込められている。

オープンレビューを選択したのは、テーマに従って、研究者に限らず広くコメントを受け付けるためだろう。完成した暁には、オハイオ大出版局から刊行が予定されているが、その際コメントも可能であれば含めたうえで刊行されるようだ。

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一般的に、歴史研究者のコミュニティは一般市民の「誤った歴史観を正す」という姿勢が濃厚だと思うが、あえてそこにとどまってその姿勢に対し問いを立てるというものと言えるだろう。

史学史・歴史認識・歴史理論… 歴史文化に関するポータルサイト“culturahistoria.es”

バルセロナ大学地理・歴史学部のFernando Sánchez Marcos教授による「歴史文化」を扱うポータルサイト“culturahistoria.es”。

「歴史文化」とは、もっぱらアカデミズム史学の研究を行う史学史よりも更に広く、人間集団による自身の過去との関わり、歴史認識の継承過程やその発生、普及の方法等を含めた概念。

ポータルサイトと銘打っているだけあって、サイトには、歴史文化や歴史理論、史学史等の文献情報、地図や女神クリオ等の画像、歴史小説・歴史映画等の情報が掲載されている。もっとも、サイトは英語に対応しているとはいえ、やはり文献関係の情報はスペイン語のものが多いようだ。

なお、バルセロナ大には歴史文化に関する修士課程もあるようだ。

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自分の研究領域、研究関心にど真ん中だよな。

イギリスの史学史に関する主要リソースをまとめた“Making History”

イギリスのInstitute of Historical Researchが2008年(?)に実施したプロジェクトサイト。

このサイトは、イギリスでの近代歴史学の誕生から現代に至るまでの主要リソースを提供するもので、それらは「研究者」、「歴史研究機関・プロジェクト」、「学術雑誌」、「研究テーマ」の4つに分けてまとめられている。また、関係する論文や参考文献のほか、歴史研究者の顔写真や研究者へのインタビュー記録、教育や研究に関する統計データ等も公開している。

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イギリスの史学史を考えるうえでぜひ参照したいところ。

これの日本バージョンがぜひほしい。というか、作れないだろうか。